仕事に感じる違和感はどこから?自分の価値観と「働く意味」の再定義
「働く」という日々の営みの中で、漠然とした違和感やモヤモヤを感じることはないでしょうか。一生懸命取り組んでいるはずなのに、どこか心が満たされない、このままで良いのか分からない――そうした感覚は、特にキャリアの初期段階にある20代後半の方々にとって、少なからず経験するものでしょう。
かつてのように一つの会社で定年まで勤め上げるモデルが当たり前ではなくなった今、働き方は多様化しています。多くの選択肢があるからこそ、自分にとって本当に「働く意味」とは何なのか、どこに向かうべきなのかを見失いやすい時代とも言えます。
この記事では、仕事に感じる違和感の根源に焦点を当て、それが自身の「価値観」とどのように関わっているのかを探ります。そして、「働く意味」を自分自身の言葉で再定義するための手がかりを提供します。
仕事の違和感は「価値観のズレ」かもしれない
日々の業務内容、職場の雰囲気、評価のされ方、会社の理念や文化など、仕事を取り巻く様々な要素の中で「何か違う」と感じる時、その背景には自身の内面にある「価値観」とのズレが存在している可能性があります。
価値観とは、私たちが物事を判断したり、行動を選択したりする際の根源となる、大切にしている考え方や基準のことです。「何を良いと感じるか」「何に重きを置くか」「どのようにありたいか」といった、その人固有の信念や欲求と言い換えることもできます。
例えば、
- 成果よりもプロセスを重視する価値観の人が、結果だけを厳しく問われる環境にいる
- チームワークを大切にする価値観の人が、個人での競争を煽られる環境にいる
- 安定や確実性を求める価値観の人が、変化やリスクの大きい環境にいる
- 社会貢献や誰かの役に立つことを重視する価値観の人が、利益追求のみに特化した業務に携わっている
このように、自身の価値観と、身を置く環境や仕事内容が大きく異なると、無意識のうちにストレスを感じたり、「何のために働いているのだろう」という疑問につながったりすることがあります。この違和感は、必ずしも「その仕事自体が悪い」のではなく、「自身の価値観とその環境・仕事との相性が合わない」というサインかもしれません。
自分の「価値観」を見つけるための手がかり
では、自身の価値観とは一体何なのでしょうか。それは、キャリアに関する問いに限らず、人生全般において自分を知る上で非常に重要な要素です。普段意識していないことも多いため、意図的に探求する時間を持つことが大切です。
自分の価値観を見つけるための手がかりは様々にあります。いくつか例を挙げます。
- 過去の経験を振り返る:
- これまでの仕事や活動で、特に「楽しかった」「充実していた」「やりがいを感じた」のはどんな時でしたか? その時の状況や、自分がどんな状態だったかを具体的に書き出してみましょう。
- 逆に、「つらかった」「嫌だと感じた」「もう経験したくない」と思ったのはどんな時でしたか? その原因は何だったのか、避けて通りたいことは何かを考えてみましょう。
- 仕事以外でも、夢中になれたことや、大切にしてきたことはありますか?
- 理想の働き方や生き方を想像する:
- もし時間やお金に制約がないとしたら、どんな働き方をしたいですか? どんな生活を送りたいですか?
- どんな人たちと一緒に過ごしたいですか? どんなことにエネルギーを使いたいですか?
- 「成功」とは、あなたにとってどのような状態ですか? どんな時に「自分らしい」と感じますか?
- 「なぜ」を掘り下げる:
- 今の仕事を選んだのはなぜですか? その仕事を続ける理由は?
- これからどんなキャリアを築きたいですか? それはなぜですか?
- 自分にとって「良い仕事」とは何ですか? なぜそう思うのですか?
- 問いに対して「なぜそうなのか?」を繰り返し問いかけることで、表面的な理由の奥にある、より深い価値観が見えてくることがあります。
- 大切にしている「言葉」や「概念」に注目する:
- 心惹かれる言葉や、日頃から意識している概念(例: 成長、貢献、自由、安定、信頼、挑戦、調和など)はありますか? それらの言葉が、あなたの価値観を反映している可能性があります。
こうした内省を通じて、自分が仕事や人生において無意識のうちに求めているもの、大切にしている基準が少しずつ明らかになってくるでしょう。
価値観のズレにどう向き合うか
自分の価値観が少し見えてきたとして、もし現在の仕事との間にズレを感じる場合、どのように向き合えば良いのでしょうか。すぐに「転職する」「働き方を変える」といった結論を出す必要はありません。大切なのは、そのズレを認識し、どうすれば自分らしく「働く意味」を見出しながらキャリアを継続できるかを考えることです。
- ズレの度合いと重要度を評価する:
- 感じるズレは、あなたの価値観全体の中でどれくらいの重要度を持つものでしょうか? 絶対に譲れない核となる価値観なのか、それとも調整可能な部分なのかを見極めます。
- 全ての価値観が満たされる仕事は稀です。どの価値観が満たされれば、仕事に対する納得感や充実感が得られるのか優先順位を考えてみましょう。
- 現在の環境で調整できる可能性を探る:
- 今の仕事内容や関わり方を少し変えることで、価値観を満たせる余地はないでしょうか? (例: 業務の進め方を工夫する、部署異動を希望する、社内プロジェクトに参加するなど)
- 上司や同僚と、自身のキャリアや仕事への向き合い方について話し合う機会を持つのも良いかもしれません。
- 捉え方や焦点を変えてみる:
- 現在の仕事の「意味」を、これまでとは異なる視点から見てみることも有効です。例えば、直接的には価値観と合わない業務であっても、それが将来の目標達成のためのスキル習得につながっている、生活を安定させる土台になっている、といった側面から意味を見出すことも可能です。
- 仕事そのものだけでなく、その仕事を通じて得られる経験、人間関係、スキル、あるいは仕事後の時間で取り組む活動など、より広い視野で「働くこと」の全体的な意味を考えてみます。
- 新しい選択肢を検討する(副業、転職など):
- 現在の環境での調整が難しい場合や、核となる価値観とのズレが大きい場合は、副業で別の価値観を満たす活動を始めたり、価値観がより合致する環境への転職を検討したりすることも選択肢となります。
- 多様な働き方やキャリアパスに関する情報収集を行い、自分に合った道を探求することは、自分自身の「働く意味」を広げ、深めるプロセスでもあります。
「働く意味」は変化するもの
「働く意味」や自身の価値観は、一度定めたら unchanging なものではありません。人生経験を重ねたり、社会の変化に適応したりする中で、自然と変化していくものです。
そのため、定期的に立ち止まり、自分自身の内面に耳を傾け、「今の自分にとって、働くとはどういうことなのだろうか」「今、最も大切にしたい価値観は何だろうか」と問い直す時間を持つことが重要です。
仕事に感じる違和感は、決してネガティブなサインだけではありません。それは、あなたが自分自身の「働く意味」や価値観について深く考える機会を与えてくれているのかもしれません。この機会を活かして内省を深め、自分らしいキャリアの道を切り拓いていくための一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。