「なんとなく」から「自分ごと」へ:受け身の働き方から「働く意味」を再定義するプロセス
はじめに:仕事に「なんとなく」向き合っていませんか?
社会人経験を数年重ね、仕事にも少しずつ慣れてきた頃、ふと「このままで良いのだろうか」と漠然とした不安を感じる方は少なくありません。日々の業務をこなし、与えられた役割を果たす中で、「なんとなく」時間が過ぎていく。大きな不満はないけれど、仕事に心から満たされている感覚もない。そんな「なんとなく」の状態は、多くの20代後半の方が経験するのではないでしょうか。
多様な働き方が提唱され、個人の価値観が重視される現代において、この「なんとなく」は、自身のキャリアや「働く意味」について立ち止まって考える大切なサインかもしれません。しかし、何から考えれば良いのか分からず、さらに不安が募るという声も耳にします。
この記事では、なぜ私たちは仕事に対して「なんとなく」という感覚を持ってしまうのか、その背景を探りながら、受け身な状態から抜け出し、自分にとっての「働く意味」を主体的に見つけ出し、再定義するためのプロセスを考えていきます。
なぜ仕事が「なんとなく」になってしまうのか
「なんとなく」仕事をしていると感じてしまう背景には、いくつかの要因が考えられます。
明確な目標やキャリアパスが見えにくい
入社当初は明確だった目標も、日々の業務に追われる中で見失いがちです。また、終身雇用が当たり前ではなくなった現代において、会社が示すキャリアパスが必ずしも自分の将来と一致するとは限りません。自分で描く明確な目標がないまま目の前のタスクをこなしていると、「何のために働いているのか」という疑問が生まれやすくなります。
業務が細分化され、全体像が見えにくい
現代の多くの仕事は細分化・専門化されています。自分の担当する業務が、組織全体や社会にどのように貢献しているのか、その繋がりが見えにくい場合があります。自分の仕事の「点」と「線」が繋がらないと、貢献実感や達成感が得にくく、「なんとなく」こなしているという感覚に繋がることがあります。
選択肢が多すぎる、あるいは少なすぎる感覚
働き方の多様化は、一方で「自分にとっての正解」を見つける難しさを生んでいます。転職、副業、フリーランスなど様々な選択肢がある中で、どれが自分に合っているのか分からず、迷って立ち止まってしまう。あるいは、現在の環境以外に選択肢がないように感じてしまい、現状維持を選ぶ中で「なんとなく」受け入れているという状態になることもあります。
仕事に対する期待値が曖昧
入社前のイメージと現実のギャップ、あるいはそもそも仕事に対してどのような期待を持っているのか自分自身でも分かっていない場合、漠然とした不満や物足りなさを感じやすくなります。「仕事を通じて何を得たいのか」「どんな自分でいたいのか」といった内的な期待が曖昧だと、日々の業務に「なんとなく」取り組むことになります。
「なんとなく」を「自分ごと」に変える第一歩:内省を深める
「なんとなく」の状態から抜け出し、仕事に主体的に向き合うためには、まず自分自身を知ることから始まります。これは、自分にとっての「働く意味」を再定義するための大切な第一歩です。
自身の経験を振り返る問いかけ
過去の仕事の経験を具体的に振り返ってみましょう。どんな時に「なんとなく」ではなく、「自分ごと」として仕事に取り組めていたでしょうか。
- 仕事で「心地良い」と感じた瞬間、没頭できた瞬間はありましたか?
- 逆に「これは違うな」「嫌だな」と強く感じた瞬間は?
- どんな時に「やりがい」や「達成感」を感じましたか?
- どんな時に自分の仕事が「誰かの役に立っている」と実感できましたか?
- 仕事を通じて、どんなスキルが身についたり、どんな考え方ができるようになりましたか?
- 理想とする働き方、働く環境、人間関係はどのようなものでしょうか?
これらの問いを通じて、過去の経験の中に隠された自身の価値観、得意なこと、関心事、そして仕事に求めるものが少しずつ見えてくるはずです。漠然とした感情を具体的な出来事や瞬間に紐づけて考えることが重要です。
感情の裏にある欲求を探る
「なんとなく満たされない」「なんとなく不安」といった感情は、言葉にならない欲求のサインです。その感情の裏には、「もっと成長したい」「誰かに認められたい」「自分の力を試したい」「落ち着いた環境で働きたい」「もっと自由な時間が欲しい」など、様々な欲求が隠されています。感情に蓋をするのではなく、その感情が何を伝えようとしているのか、注意深く耳を傾けてみましょう。
「働く意味」を再定義するための具体的な視点
内省を通じて見えてきた自身の価値観や欲求を踏まえ、多様な視点から「働く意味」を再定義することを試みます。働く意味は一つではなく、複数の要素が組み合わさることで形成されるものです。
スキルと成長の視点
仕事を通じて、どのようなスキルを習得し、どのような自分に成長したいかという視点です。特定の専門性を深めたい、マネジメント能力を身につけたい、新しい分野に挑戦したいなど、成長への意欲は強力な「働く意味」の源泉となります。
貢献と影響の視点
自分の仕事が、顧客、同僚、社会といった他者にどのような影響を与えているか、どのように貢献できているかという視点です。誰かの役に立っている、社会をより良くすることに繋がっているという実感は、深い満足感と「働く意味」をもたらします。
関係性の視点
どのような人々と共に働きたいか、どのような組織文化の中で働きたいかという視点です。信頼できる仲間との協業、尊敬できる上司からの学び、健全な競争環境など、人間関係や組織との関わり方も「働く意味」を構成する重要な要素です。
ライフスタイルの視点
仕事が自分の人生全体の中でどのような位置づけか、ワークライフバランスをどのように実現したいかという視点です。プライベートの充実、趣味や家族との時間、心身の健康といった要素と、仕事の活動をどのように調和させるかを考えることも、「働く意味」を考える上で欠かせません。
これらの視点を参考に、自身の内省結果と照らし合わせながら、自分にとって何が特に重要なのか、優先順位をつけて考えてみましょう。
小さな行動から始める:受け身から主体へ
「働く意味」を内省し、再定義することは重要ですが、それだけでは「なんとなく」の状態から完全に抜け出すのは難しいかもしれません。考えたことを小さな行動に移してみることが、受け身から主体的な働き方への転換を促します。
興味のサインを見逃さない
日々の業務の中で、あるいは情報収集をする中で、少しでも興味を引かれたこと、心が動いたことに意識的に注意を払いましょう。それは、自身の隠れた関心事や価値観を示している可能性があります。
小さな「自分ごと」を作る行動
- 興味を持った業務やプロジェクトに、積極的に参加の意思表示をしてみる。
- 学びたいと感じたスキルに関連する書籍を読んでみる、オンライン講座を試してみる。
- 社内外の懇親会や勉強会に参加し、普段話さないタイプの人と交流してみる。
- 自分の強みや関心事を活かせそうな、部署内の小さな改善提案をしてみる。
- 現在の仕事とは全く異なる分野のボランティア活動や副業に挑戦してみる(もし可能であれば)。
完璧な一歩である必要はありません。まずは「試してみる」という姿勢が大切です。小さな行動を通じて得られる新しい経験や気づきが、さらに内省を深め、自分にとっての「働く意味」をより明確にしてくれます。
「働く意味」は変化していくもの
自分にとっての「働く意味」を見つける旅は、一度で終わるものではありません。人生のステージや経験によって、価値観や優先順位は変化していきます。だからこそ、定期的に立ち止まり、自身の「働く意味」を問い直す機会を持つことが推奨されます。
例えば、半年に一度、あるいは一年に一度、この記事でご紹介したような内省の問いかけを改めて行ってみるのも良いでしょう。その時の自分が仕事に何を求め、何に価値を感じているのかを知ることが、変化に柔軟に対応し、主体的なキャリアを築くことに繋がります。
まとめ:あなたの「なんとなく」は、新しい「働く意味」を見つけるチャンス
「なんとなく」仕事をしていると感じる状態は、決して珍しいことではありません。それは、これまでの働き方や価値観を見つめ直し、自分にとってより意味のある働き方を探求するための大切な通過点であるとも言えます。
この状態から抜け出すためには、まず「なぜ自分はなんとなく感じているのだろう?」と問いかけ、自身の感情や経験を丁寧に内省することから始めてみましょう。そして、スキル、貢献、関係性、ライフスタイルといった多様な視点から、自分にとっての「働く意味」を再定義することを試みます。
考えたこと、気づいたことは、難しく考えすぎず、まずは小さな行動に移してみてください。その一歩一歩が、受け身な状態から「自分ごと」として仕事に向き合う姿勢へと繋がります。
あなたの「なんとなく」という感覚は、新しい「働く意味」を見つけ、より充実したキャリアを歩み始めるためのチャンスです。この記事が、その一歩を踏み出すためのささやかなヒントとなれば幸いです。