「稼ぐ」だけじゃない。「働く意味」から考えるお金との付き合い方
はじめに:お金のために働くことと、「働く意味」
社会人として数年経験を積む中で、毎月の給与明細を見て「何のために働いているのだろう」と漠然と感じることはないでしょうか。生活費、家賃、奨学金の返済、あるいは将来のための貯蓄など、お金は私たちの生活を支える上で非常に現実的で重要な要素です。多くの人にとって、働くことはまずお金を得るための手段であると言えます。
しかし、「働く意味」を考え始めたとき、単にお金を得るためだけでは満たされない感覚に直面することもあるかもしれません。やりがい、成長、社会への貢献、自己実現といった、お金以外の価値を仕事に求め始めたとき、お金のために働くという現実との間で葛藤が生じることがあります。
このコラムでは、お金と「働く意味」の関係性を深く掘り下げていきます。お金が「働く意味」にどう影響を与えるのか、そして「働く意味」を見失わずにお金とどう付き合っていくのかについて考えていきたいと思います。
お金が「働く意味」に与える影響
お金が私たちの「働く意味」やキャリア選択に影響を与える側面は多岐にわたります。
- 生活基盤と安心感: 最も直接的な影響は、お金が生活の基盤を支えることです。衣食住を満たし、経済的な安心感をもたらすことは、私たちが日々の生活を営み、精神的な安定を保つ上で不可欠です。この安心感があるからこそ、私たちは他の「働く意味」を追求する余裕を持つことができます。
- 選択肢の拡大: お金は、私たちのキャリアや人生における選択肢を広げます。学びたいことがあれば講座を受ける、興味のある分野で独立を考える、あるいは一時的に立ち止まって別の道を模索するなど、経済的な余裕は新しい挑戦や変化を可能にします。
- 自己評価との関連: 社会においては、得ている収入が社会的な評価や自身の成功の度合いを示す指標の一つとして見なされることがあります。収入が高いほど、社会から必要とされている、あるいは能力が高い、といった感覚につながり、それが自己肯定感や「働く意味」の一部となることもあります。
これらの点から、お金は単なる交換手段ではなく、私たちの生活の質、将来の可能性、さらには自己認識にも深く関わる要素であり、「働く意味」を考える上でも無視できない現実と言えます。
「お金のためだけ」になったときの虚無感
一方で、働くことの目的が「お金を得る」ことだけに終始してしまうと、別の問題が生じることがあります。
仕事内容に興味が持てない、誰かの役に立っている実感が得られない、成長を感じられないといった状況で、唯一のモチベーションがお金である場合、仕事は単なる苦痛を伴う義務になってしまう可能性があります。
特に、若い頃に抱いていた「こんな仕事をしたい」「こんな大人になりたい」といった理想とのギャップが大きい場合、その虚無感はより一層深まるかもしれません。お金は生活を維持するためには必要不可欠ですが、それだけでは内面的な充足感や「働く意味」は得られにくいのです。
「働く意味」からお金との関係性を再定義する
では、「働く意味」を軸に置いたとき、お金とはどのように付き合っていくのが良いのでしょうか。視点を変えることで、お金と働くことの関係性をより建設的に捉えることができます。
- お金を「目的」ではなく「手段」として捉える: お金そのものを最終的な目的とするのではなく、自分が大切にしたい「働く意味」(成長、貢献、創造性など)や、人生で実現したいこと(自由な時間、学び、家族との時間など)を達成するための「手段」として捉え直してみます。この視点を持つことで、お金を稼ぐという行為に、より上位の目的が付与され、意味が見出せるようになります。
- お金がもたらす「意味」に注目する: ただ金額を見るだけでなく、そのお金がもたらす本質的な価値に目を向けます。例えば、十分な収入があることで得られる「安心」や「自由」、あるいは仕事を通じて対価を得ることで生まれる「自己肯定感」や「社会との繋がり」といった側面です。
- 最低限必要なお金と、さらに求めるお金の意味を分けて考える: 生きていく上で最低限必要なお金と、より豊かな生活や特定の目的のために求めるお金を区別します。最低限のお金を確保することは多くの人にとって「働く」ことの第一義的な意味になり得ますが、それ以上の収入に何を求めるのかを掘り下げることで、自身の価値観に基づいた「働く意味」が見えやすくなります。
- 「お金を稼ぐこと」自体に意味を見出す: 仕事を通じてお金を得る過程そのものに意味を見出すことも可能です。例えば、顧客の課題を解決した対価として、あるいは自身の専門性を提供した成果としてお金を受け取ることは、自己の能力や価値が社会に認められたという証でもあります。課題解決や価値提供といった仕事そのものの側面に「働く意味」を見出せば、それによって得られるお金もまた、その意味を補強するものとなります。
理想と現実のバランスを見つけるために
「働く意味」を追求したいけれど、生活のためには十分な収入も必要。この理想と現実の間でどうバランスを取るかは、多くの人が直面する課題です。
すぐに理想の働き方が見つからなくても、今の仕事の中で「働く意味」を見出す努力をしたり、お金を稼ぐことを通じて得られるもの(スキル、人脈、経験)に価値を見出したりすることは可能です。また、本業である程度お金を稼ぎながら、終業後や休日などに自身の「働く意味」を満たす活動(副業、プロボノ、学習など)に取り組むことも一つの方法です。
自分にとって、お金が「働く意味」の中でどの位置づけにあるのか、そしてお金を通じて何を獲得したいのかを定期的に問い直すことが重要です。
まとめ:お金と「働く意味」は両立できる
お金は私たちの生活を支え、選択肢を広げるための重要なツールです。一方で、「働く意味」は私たちの内面的な充足感やキャリアの方向性を定める羅針盤となります。この二つは対立するものではなく、捉え方次第で両立させ、互いを補強し合う関係を築くことができます。
「働く意味」からお金との付き合い方を考え直すことは、単に収入を増やすことだけを目指すのではなく、自身の価値観に基づいた、より豊かで意味のある働き方を実現するための第一歩となるでしょう。あなたにとって、働くこととお金は、どのような意味で繋がっていますか? この問いを心に留め、自身のキャリアと向き合ってみてください。