仕事の『葛藤』や『矛盾』は道標?そこから『働く意味』を見出す視点
仕事で感じる葛藤や矛盾はどこから来るのか
日々の仕事の中で、「なぜこんな非効率なことを続けるのだろう」「自分の価値観とは違うやり方だ」「言っていることとやっていることが違う」といった、様々な葛藤や矛盾を感じる瞬間があるかもしれません。特に社会人経験を重ねてくると、理想や建前と現実のギャップを目の当たりにすることも増えてきます。
このような感情は決して珍しいものではなく、多くの方が経験することです。むしろ、そうした葛藤を感じるということは、あなたが自分の仕事や周りの状況に対して、無意識のうちに何かしらの基準や期待を持っている証拠と言えるでしょう。その基準や期待こそが、「働く意味」や「仕事に求める価値観」を探る上で、重要な手がかりとなる可能性を秘めています。
葛藤や矛盾を「働く意味」探求の手がかりとする視点
仕事で感じるネガティブな感情や状況を、単なる不満として片付けるのではなく、自身の内面を映し出す鏡として捉え直してみましょう。
1. 感情を言語化し、その背景にある価値観を探る
どのような状況で、具体的にどのような感情(例えば、無力感、憤り、失望など)を抱くのかを観察し、言葉にしてみましょう。そして、「なぜ、その状況で、そのような感情が生まれるのだろうか?」と自問してみてください。
例えば、「頑張って資料を作ったのに、会議で誰も見向きもしなかった」という状況で無力感を感じたとします。この感情の背景には、「自分の仕事には価値があり、他者から認められるべきだ」「貢献したい」といった、あなたが仕事に求めている「意味」や「価値」があるのかもしれません。あるいは、「古いやり方に固執して非効率な状況が続いている」ことに憤りを感じるなら、「効率性」「合理性」「変化・改善」といった価値観をあなたが大切にしている可能性があります。
このように、葛藤や矛盾から生まれる感情を掘り下げることで、あなた自身が仕事に無意識のうちに期待していること、大切にしたい価値観が浮かび上がってきます。
2. 矛盾を「問い」に変換する
会社や組織のルール、あるいは業界全体の慣習などに「なぜそうなるのだろう?」と納得できない矛盾を感じることがあるかもしれません。こうした状況を批判するだけで終わらせず、「この矛盾は何を示しているのだろう?」「より良い状態にするためには、どのような考え方や仕組みが必要なのだろう?」といった問いに変換してみましょう。
この「問いを立てる力」は、自身の問題意識を明確にし、どのような課題に関心があるのか、どのような変化を起こしたいのかといった、将来のキャリアの方向性を探る上で非常に有効です。すぐに解決できなくても、問い続けることで、あなたの興味や情熱がどこにあるのかが見えてくることがあります。
3. 「自分ならどうするか」を想像する
仕事のやり方や組織の決定に対して葛藤を感じる時、同時に「自分ならこうするのに」という思いが生まれることがあります。この「自分ならどうするか」という想像は、あなたの強みや得意なこと、そして「働く意味」として実現したいことを映し出している可能性があります。
たとえ今の立場でそれを実行できなくても、その思考プロセス自体があなたの創造性や問題解決能力を示唆しています。こうした思考の積み重ねは、将来、より主体的に仕事に取り組む際や、新しい働き方を選択する際の重要な基盤となります。
葛藤や矛盾と向き合いながら「働く意味」を見失わないために
仕事の葛藤や矛盾は、完全にゼロにすることは難しいのが現実です。大切なのは、それらとどう向き合い、自身の「働く意味」を見失わないようにするかです。
すべてを解決しようとせず、エネルギーの使い所を選ぶ
感じた葛藤や矛盾の全てを解決しようとすると、疲弊してしまいます。何にエネルギーを使い、何はある程度受け流すかを意識的に選ぶことも必要です。これは諦めることではなく、限りある自身のエネルギーを、より「働く意味」につながる活動や、自身が成長できる機会に集中させるための賢明な選択です。
コントロールできる範囲で「意味」を見出す努力をする
大きな構造的な矛盾を変えることは難しくても、自分の日々の仕事の進め方、関わる人との関係性、目の前のタスクへの向き合い方など、自身がコントロールできる範囲で「意味」を見出すことは可能です。例えば、非効率な仕組みの中でも、自分の担当部分は丁寧に行うことに「プロ意識」という「意味」を見出す、困難な状況でチームをサポートすることに「貢献」という「意味」を見出す、といったように、主体的な意味づけを試みることができます。
長期的な視点で今の経験を位置づける
今の仕事で感じる葛藤や矛盾も、長期的なキャリアの視点で見れば、貴重な学びや経験となることがあります。例えば、組織の非合理性に悩んだ経験が、将来自分で事業を起こす際に反面教師となるかもしれません。困難な人間関係に直面した経験が、コミュニケーション能力を高める機会となるかもしれません。今の状況を「将来の自分のための学び」と位置づけることで、「働く意味」を再確認することができる場合があります。
まとめ:葛藤は「働く意味」への入り口
仕事で感じる葛藤や矛盾は、決してネガティブなだけの存在ではありません。それは、あなたが自身の仕事や働き方に対して、何かしらの「意味」や「価値観」を求めていることの健全なサインです。これらの感情に丁寧に向き合い、その背景にある自身の内面に光を当てることで、「働く意味」を探求するための重要な手がかりを得ることができます。
すぐに明確な答えが出なくても、葛藤を自身の「働く意味」を見つけるための「道標」として捉え、問いを立て、内省を続けるプロセスそのものが、あなたのキャリアをより豊かなものにしていくはずです。今の場所で感じる違和感や矛盾を、自分らしい「働く意味」を見出すためのスタート地点として捉え直してみてはいかがでしょうか。