受け身から主体へ。「働く意味」を自ら創り出すキャリアデザイン
「働く意味」は、本当に「見つける」ものなのでしょうか？
社会人として数年が経ち、仕事やキャリアについて考える時間が増えているかもしれません。特に20代後半は、最初のキャリアを振り返り、将来への漠然とした不安を感じやすい時期です。多様な働き方が提唱される中で、「自分にとって本当に大切な『働く意味』は何だろう？」と問い始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
多くの人が、「働く意味」とは、あたかもどこかに落ちている宝物のように、探し出して「見つける」ものだと考えがちです。自己啓発書を読んだり、成功者の話を聞いたりして、自分にも当てはまる「意味」を探そうとします。しかし、いくら探しても明確な答えが見つからず、かえって混乱したり、焦りを感じたりすることもあるかもしれません。
現代のように働き方が多様化し、価値観が多様化する時代において、「働く意味」を「見つける」という受け身の姿勢だけでは、自分らしいキャリアを築くことが難しくなってきています。なぜなら、「働く意味」は、誰かに与えられるものでも、どこかに固定されて存在するものでもなく、むしろ自分自身で主体的に「創り出していく」ものだからです。
「見つける」ことの限界と「創る」ことの可能性
「働く意味」を「見つける」という考え方は、過去の成功モデルや既存の価値観に依存しやすくなる側面があります。例えば、「安定した大手企業で働くことこそが意味がある」「〇〇というスキルを習得すれば市場価値が高まる」といった外部基準に流されやすくなります。もちろん、これらが「働く意味」の一部となりうることはありますが、それだけでは移り変わる時代の中で自分自身の内面と向き合い、納得のいくキャリアを築くには不十分かもしれません。
一方、「働く意味」を「創る」という考え方は、より能動的でパーソナルなプロセスです。これは、自分の経験、スキル、興味、そして最も大切にしたい価値観といった「自分自身」というユニークな材料を使い、仕事やキャリアの中に自分ならではの意味や価値を積極的に生み出していく試みです。
この「創る」という視点に立つことで、たとえ周囲からは「当たり前」に見える仕事であっても、自分にとっては深い意味を持つものに変えることができます。また、変化や不確実性の高い状況においても、自分自身の軸を持って柔軟に対応していく力が養われます。
「働く意味」を自ら「創る」ための視点とアプローチ
では、具体的にどのようにして「働く意味」を自ら「創り出していく」ことができるのでしょうか。いくつかの視点とアプローチをご紹介します。
1. 徹底的な自己理解を深める
「働く意味」を創るための出発点は、自分自身を知ることです。「自分が何に喜びを感じるのか」「どのような時にエネルギーが湧くのか」「どんな活動に没頭できるのか」「大切にしている価値観は何か」といった内面的な問いに向き合います。
自己理解を深めるためには、以下のような問いかけが有効です。
- これまでの仕事や人生で、特に「面白い」「楽しい」「やりがいを感じた」と感じた瞬間はいつですか？それはなぜですか？
- どのようなことに時間やエネルギーを費やすのが好きですか？
- 人から「あなたらしいね」「これが得意だね」と言われることは何ですか？
- 仕事を通じて、または仕事以外でも、どのような状態や社会を実現したいという思いがありますか？
- お金や地位以外で、働く上で最も大切にしたいことは何ですか？（例：成長、貢献、人間関係、自由、安定など）
これらの問いへの答えは、自分の中に「働く意味」を創り出すためのヒントや材料が隠されている場所を示してくれます。
2. 日々の経験に意識的に意味を付与する
「働く意味」は、必ずしも壮大な目標や社会貢献といった大きなことばかりではありません。日々の業務の中にも、意味を「創る」余地は十分にあります。
例えば、ある業務をこなす中で、「どうすればもっと効率的にできるだろう？」「この仕事は、次の工程の人にどう役立つのだろう？」「これを学ぶことで、将来どんな可能性があるだろう？」といった問いを持つことです。一見単純な作業も、その目的や周囲への影響、そこから得られる学びを意識することで、そこに自分なりの意味や価値を見出すことができます。
成功した経験だけでなく、失敗や困難な経験にも目を向けます。「なぜうまくいかなかったのだろう？」「この状況から何を学べるだろう？」と内省することで、それらの経験に成長や学びといった意味を付与し、将来の糧とすることができます。
3. 「何のために働くか」というパーパス（目的）を考える
自分の内面と向き合い、日々の経験に意味を見出すことに加えて、自分が「何のために働くのか」という少し大きな問い、つまりパーパス（目的意識）を持つことも、「働く意味」を創る上で重要な要素です。
自分の仕事が、どのような人々に、どのような価値を提供しているのか。自分が所属する組織は、社会にどのような貢献をしようとしているのか。そして、自分自身は、働くことを通じてどのような状態を目指しているのか。
これらの問いは、自分の仕事が単なるタスクの羅列ではなく、より大きな文脈の中に位置づけられていることを教えてくれます。このつながりを意識することで、仕事に対するモチベーションが高まり、困難な状況でも乗り越えるための内的な強さが生まれます。パーパスは固定されるものではなく、経験や学びを通じて進化していくものです。
4. 試行錯誤を恐れず、アップデートし続ける
「働く意味」は一度創ったら終わり、というものではありません。自分の成長や社会の変化に応じて、常にアップデートしていく必要があります。
新しい働き方や副業、転職、あるいは現職での役割変更など、様々な経験を通じて、自分が本当に大切にしたいことや、働くことを通じて創り出したい意味が変化していくことは自然なことです。
完璧な「働く意味」を一気に見つけよう、あるいは創り出そうとするのではなく、まずは小さく試してみる、違和感があれば立ち止まって考え直す、といった試行錯誤のプロセスそのものが、自分にとって最適な「働く意味」を創り上げていく道筋となります。多様な働き方は、この試行錯誤のための選択肢を豊富に提供してくれるものです。
まとめ：「働く意味」は、あなた自身が創り出すもの
「働く意味」は、外から与えられるものではなく、あなた自身の内面と向き合い、日々の経験に意識的に価値を付与し、目的意識を持つことで、自ら主体的に創り出していくものです。
今の仕事や働き方に漠然とした不安を感じているとしても、それは決してネガティブなことだけではありません。それは、あなたが自分自身のキャリアをより深く考え始め、あなたにとって本当に大切な「働く意味」を創り出すための大切なサインかもしれません。
「見つける」という受け身の姿勢から、「創る」という能動的な姿勢へ。この視点の転換が、多様化する働き方の中で自分らしい道を切り拓き、納得のいくキャリアをデザインするための鍵となります。焦らず、一つ一つの経験を大切にしながら、あなただけの「働く意味」を、ぜひあなたの手で創り出していってください。